プリフロップソルバーの登場以来、プリフロップ戦略に関するいくつかの非常に興味深い事実が発見されました。中でも特に面白く、有用な発見の1つがコネクタ戦略に関するものでした。
結論から言うと、特定のシナリオにおいて、ローカードのスーテッドコネクタ(54など)が、より高いコネクタ(98など)よりも有利となります。本記事ではその理由と、その事実を踏まえてプリフロップ戦略を調整する方法をご紹介します。
一部のスーテッドコネクタが他のコネクタよりも優れている理由
一部のスーテッドコネクタが他のコネクタよりも優れている理由には、以下の2つの概念が深く関わっています
1.インプライドオッズ
インプライドオッズとは、ハンドをプレイした場合に後のストリートで勝つ(または失う)と予想される金額を指します。この考え方は、ノーリミットホールデムでは特に重要です。これは、全てのプレーヤーがいつでもオールインできるビッグベットゲームだからです。
2.ドミネーション
ドミネーションとは、2人以上のプレイヤーが同じランクのカードを共有しているが、そのうちの1人がより高いキッカーを持っている場合を指します。たとえば、あなたがA9持っていて、対戦相手がAJ持っている場合、対戦相手はあなたをドミネートしています。
これら2つの概念を念頭に置いて、54sが98sよりも優れている状況について考察してみたいと思います。
54sが98sより有利なケース
54sは3ベットを仕掛ける、または3ベットをコールするのに適したハンドです。一見、直感的ではありませんがこの理由を見ていきたいと思います。たとえば、以下の図はソルバーによるカットオフのボタン3ベットに対するレンジです。
(参考: Cutoff vs Button 3-Bet Range from the Upswing Lab (Advanced Solver Ranges))
図の通り、54sは常に3ベットに対してコールですが、98sのコールの割合は約半分です。先に触れた2つの考え方、つまりインプライドオッズとドミネーションの存在がこの結果が導かれる理由です。
ケーススタディ:98sで3ベットした場合
あなたがボタン、カットオフのプレーヤーがレイズしたケースを想定してみましょう。
プリフロップ
あなたは9♠8♠を持っており3ベットすることにしました。貴方の3ベットにカットオフはコールしました。
フロップ
フロップはQ♠J♣6♥で、カットオフはチェックしました。あなたは小さく(33%ポット)c-betし、カットオフは再びコールしました。
ターン
ターンは7♦で、ストレートに4つのアウツが加わりました。カットオフは再びチェックし、貴方のミディアムサイズ(66%ポット)のベットに対してコールしました。
リバー
リバーはT♦で、貴方はストレートを完成させます。カットオフがチェックし、貴方がオールインすると、カットオフがフォールドしました。
このケースからの学びは?
さて、無事にポットを獲得した貴方ですがこのシチュエーションにおいて、検討すべき重要な要素があります。
Q♠J♣6♥7♦T♦というボードをもう一度見て、相手がリバーの貴方のベットに対してコールできない理由を説明できるかどうか、考えてみてください。
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<答え合わせ>
Q-J-Tを含むボードでは、AKの多くの組み合わせのハンドがあなたのハンドに対して上位ストレートになります。AKは3ベットのレンジに常に存在し、対戦相手はこのことを考慮するため、これにより98sのインプライドオッズが大幅に低下します。言い換えると、仮に相手がそこそこハンドを完成させていたとしても、相手のAKが見えている状況ではよりパッシブにプレイせざるを得なくなり、結果として貴方はバリューを引き出しづらくなります。
54sで3ベットした場合との違い
では、貴方が54sを持っていた場合はどうでしょうか。ターンの状況で(Q♠J♣6♥)7♦で54sを持っているケースを見てみましょう。
<あなたのハンド>
<ターンの状況>
インプライドオッズが高まるケースが増える
リバーがTでなく、3または8をヒットした場合、あなたのハンドはうまく偽装され、貴方のストレートは対戦相手からより多くのチップを引き出すことが可能になるでしょう。何故なら、先程確認したように対戦相手から見た貴方のレンジにはAKの多くが含まれており、貴方の最後のベットをキャッチするためコールする確率が高くなるからです。
特定のリバーにおいて効果的なブラフのチャンスが生まれる
先のケースのように、リバーがA、K、またはTの場合、対戦相手はAKをケアする必要があるため、貴方のブラフの有効性が高まります。つまり、5ハイのハンドでAKをストレートを装った非常に有益なブラフを行うことが出来ます。
54sは98sよりもドミネートされる確率が低い
貴方が3ベットした場合、対戦相手のコール範囲には、多くのスーテッド9xおよび8xハンド(A9s-T9s、A8s-T8s)が含まれます。これはつまり、98sはかなり頻繁にドミネートされ、平均してより大きなポットを失うことになることを意味します。
一方、54sを持っている場合、対戦相手にドミネートされるハンドの割合は98sと比較して少なくなります。(65s、A5s-A4s等が対戦相手にドミネートされるハンドとなる。)つまり、54sがヒットしたボードにおいては、対戦相手の3ベットのコール範囲とあまり重複しません。
こちらが3ベットを仕掛ける場合の比較
同じ考え方が3ベットをコールする場合にも適用されます。98sで3ベットをコールする場合、対戦相手にドミネートされる可能性が高くなります。これは、Q8やJ9のようなハンドを含むルーズな3ベットレンジの相手とプレイしている場合、特に大きな問題になります。
インプライドオッズ
先のケースで確認したように、98sがヒットするボードには、インプライドオッズが相対的に低くなります。対戦相手から見たレンジにAKが含まれるからです。さらに、あなたが強くヒットするボード(例えば9-8-4やJ-T-7など)は通常、対戦相手からみて非常に危険なボードとなり、結果的に対戦相手から多くのチップを引き出すことは難しくなります。これらのケースでは両方とも、インプライドオッズが大幅に小さくなります。
ドミネーション
54sを保持している場合、これらのドミネーションとストレートオーバーストレートの問題に遭遇する確率は低くなります。確かに、特定のケース、例えばボードの8-7-6に対し対戦相手がT9を持っている場合などは非常に危険な状況となりえますが対戦相手のレンジT9が含まれるケースは少ないため、例えば対戦相手がAKを持っている、というような王道のケースと比較し頻繁には起こるものではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はインプライドオッズとドミネーションという2つの観点から98sと比較し54sが有利な状況について説明しました。勿論、全ての54sに今回紹介したケースが適用されるわけでは有りませんが、今回ご紹介したような観点を持つことで、他のハンドに対してもより深い考察ができるようになるかと思います。
参考記事(Why 54 is Better Than 98 (And How That Should Impact Your Strategy https://upswingpoker.com/54s-vs-98s-preflop/)